荷物固定用フック

 車を持っていない私は、ガソリンスタンドに灯油を買いに行くにもオートバイに18リットルのポリタンを積んで行く。
 私の乗っているバイクは、わりとしっかりとしたキャリア(荷台のこと)がついているので、積むことに関しては全く問題はない。
 ツーリングのときには、重さはともかくもっと大きい荷物を積むのだし。

 ポリタン積むのには愛用のゴムベルトを使っているのだが、縛りつけるのに時間がかかるうえに、スタンドの兄ちゃんから見ると落ちるのではないかと不安らしい。
 実際には灯油を積んだままブレーキターンをかましても落ちる心配がないくらいしっかり積まれているのだが。

 さて、そんなわけでもっと簡単にしっかり固定できる方法はないかと長い間考え続けてきたのだが、やっと方法が決まったので作ってみた。

 用意するもの。
 厚さ1.5mm、幅50mmのアルミ板。本当はもっと幅が狭く、厚みが厚い方がいいと思うのだが、諸般の事情でこれにした。
 プラスチックのバックル。各社から出ているが、私はNifcoのやつを愛用している。日の字の形をしたパーツを使うとベルトを縫いつけなくてすむので楽である。
 幅30mmのナイロンベルト。当然バックルに適合した幅である。荷物を固定するだけなら25mmのものでも充分だと思うが、幅30mmというのはかばんのショルダーベルトにも使えるので使い勝手が良いと思う。見ための丈夫さもある。
 もしこれから買う人がいるようであれば、今後自分がどのような用途に使うのかを考え、同じ幅のもので統一したほうが使い回しがきく。
 

 アルミ板を適当な長さに切り出す。
 私のバイクのキャリアは直径20mmのパイプでできている。端からベルトを通す穴まで5mm以上、穴の幅が5mm、そこから15mmの位置でこのパイプを半周して5mmほど飛び出すこと、などを考えると60〜70mmくらいが妥当な線か。
 格好よく作るのであれば、ベルトの通るところだけ50mm幅にし、キャリアにひっかける部分は25mm程度にまで細くしたY字型にするとよいが、この場合は幅が狭くなるぶん板厚を厚くする必要があるうえに、切るのが面倒なのでやめた。要は使えればいいのだ。外観は二の次。こういう根性で作っているから見た目が悪くなるのだよな。

 これにベルトを通す長穴を開ける。
 まず、切り出した板の端から10mmくらいのところに30mmの間隔でφ5の穴を開け、そこに糸ノコを通してキコキコと切り抜き、最後にヤスリで仕上げる。
 こういう作業には当然万力様のお力を借りる。
 この作業は、板が薄いほうがやりやすいのだが、あまり薄いと強度が心配になる。その妥協点が1.5mmというわけ。
 ここに通すのはナイロンのベルトなので、引っ掛かりがあるとベルトが切れる可能性がある。角をきれいに落とし、ベルトが切れないようにしよう。
 この穴開け作業が結構面倒なので、結局会社にあったフライスという工作機械を使った。会社の設備は自由に使うものなのだ(笑)。

 次に曲げ加工である。
 本来であればここでも万力様に御登場願うところなのだが、φ20のパイプに合うようにきれいに曲げるための型などは持っていないので万力様の出番はない。
 ではどうやって曲げるのか。
 なぜφ20なのかといえばキャリアのパイプがこのサイズだからである。
 ならばキャリア自体を治具に使えばいい。現物合わせが精度出しの最良の方法である。
 写真のようにキャリアとフェンダーの間に適当な当て物をして、それが動かないように当て物をおなかでしっかり押さえ、あとは力技で曲げるだけである。
 曲げる時に下の板に喰いこまないよう、アルミの板を一枚間に挟んでいる。
 写真では片手で曲げているようにみえるが、右手はカメラを持っているので写っていないだけである。
 両手でないときれいに曲げることはできない。

 一見雑な作業にみえるが、実は雑である。
 にもかかわらず、このように美しくできてしまうところが技術というものであろう。
 こういう写真になると、まるで製品のようではないか。
 オートバイのシートの上で撮った写真とは思えない(笑)。
 この作業も、板が薄いほうがやりやすいのだが、あまり薄いと強度が心配になる。
 その妥協点が以下省略。

 あとはこの金具にナイロンベルトを通してバックルを取り付けるだけ。
 ベルトを通した状態が下の写真。

 左から金具部分、バックル(オス)、バックル(メス)。




 バイクにつけるとこんな感じ。
 この写真では1組のベルトしか使っていないが、縦2組横1組の計3組6本のベルトを作って縛りつけることで、18リットルの灯油満タンのポリタンクも安心して固定できる。
 ワンタッチで固定できるというのもなかなか便利であるが、欠点としてベルトの弾力がないために、かばんのように中の荷物が動いてしまうものは締めつけがゆるくなってしまうので向かない。やはりここはゴムロープの出番となる。ゴムロープは、それ自身が摩擦抵抗が大きいために、思った以上にしっかり荷物を固定できるので、今回のベルトを作製したあとでも出番がなくなるわけではない。

 しかし、バイクのシートがこんなに撮影に適する場所だとは思わなかった(笑)。

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