花火大会

 新潟の花火はすごい。何がすごいかというと、至近距離で花火が爆発するのである。
 花火の本場といえば小千谷近辺だが、打ち上げといえば長岡が有名。世界最大級の四尺玉が上がるらしい。らしいというのは見に行ったことがないからである。ちなみにちょっと前まで最大であった三尺玉でもかなりすごい。どのくらいすごいかというと、はるか彼方の花火大会で打ち上げられたのがずいぶんと大きく見えるのである。

 今年の観客数は49万人とのことで、新潟市の人口がほとんどここに集まったことになる。もっとも大都市での花火大会には遠く及ばないのだろうけど。
 みんなシートを敷いて食べ物飲み物をもって、一部では宴会と化している。そんな人達でも、最初の一発できっちり花火に見入ることになるのだ。
 

下の街の明かりと花火の大きさを比べてほしい

 さて、新潟の花火。どのくらいすごいのかというと、打ち上げる花火の数が一万三千発。住宅地のすぐそばでの花火としては最大級ではないだろうか。長岡の花火はこの1.5倍だが、二日に分けて上げるらしい(詳細不明)ので密度としては新潟の方が高いこととなる。


 これだけの花火を二時間弱で打ち上げるため、単発の花火で数秒間隔、早打ちになると常時複数の花火が夜空に開いている。数十秒にわたる単発・早打ちをはさんでスターマインというパターン。いや、スターマインの合間に単発花火といったほうが正しい。
 単発の間隔が昔の早打ち、早打ちになるとせこいスターマイン並みというとちょっとおおげさか。

 さらに、新潟の花火大会では三尺玉以上の花火は打ち上げられないのである。そのくらい川幅が狭い。つまり、観客のすぐそばで爆発するのである。
 この花火の観客のため?に「安らぎ堤」という広場を河べりに造っているため、打ち上げ場所は一層近くなる。
 川幅は百数十メートル。花火の爆発する高さは音のずれからすると300m程度。川の真ん中付近の上空で爆発するので、その位置というとほぼ真上になる。物によっては本当に真上で爆発するものもある。
 もちろん私らは、打ち上げる場所の真っ正面に陣取っているのはいうまでもない。最初の写真でも対岸が見えると思うが、そこが打ち上げ場所である。

 近くで爆発するということは、その音も凄まじいものとなる。至近距離で雷が落ちたようなものだ。低音・高音、すべて腹に響くのである。
 さらに、数年前に川べりにマンションが建ったため、その反響もサラウンド効果となり、見事な音響となっている。ちなみにこのマンション、花火を見る特等席なので、川よりの部屋のほうが北側であるにもかかわらず高いそうだ。

 おそらく初めて新潟の花火を見た人だろう、「こんな花火、見たことがない」と感動している人も大勢いる。
 旅行で来た人を案内する(もちろん特等席)と、みんな圧倒される。何しろ頭上で花火が爆発し、ほんのわずかのずれで轟音が轟き、しばらくするとが降ってきたり、さらには火のついた破片までが降ってくるのである。時には近所の住宅にまで火の粉が降りそそぐ。よく中止にならないものだ。








 スターマインだが、これは打ち上げる場所が見えることが大事である。下から上まですべて見えることにより、始めてスターマインを見たといえるだろう。
 花火職人が仕掛けに火をつけた直後(導火線の火が見えるんですねぇ)いっせいに打ちあがるさま、これに尽きる。

 ちなみに私のデジタルカメラは割と広角のレンズにもかかわらず、スターマインを下から上まで写すことはできなかった。つまり、そのくらい花火が大きく見えるのである。
 近年のスターマインは、開始時に3ヶ所同時に打ち上げ、3本の火柱が立つのがはやりらしい。点火にコンピューターが導入されているというのも影響して、より凝った演出が可能になっているのだろう。

 スターマインの最後には、しだれ柳を使うと受けがいい。その日本的な情緒もさることながら、柳の木は新潟市民にとってなじみ深いものなのである。しかし、このしだれ柳、したに落ちてくるというよりも、こっちに向かって落ちてくるのである。写真でもかなりのローアングルであるのがわかるだろう。
 
 

 今年は新潟市政110周年ということで、記念の仕掛け花火も用意されていた。写真ではほとんどわからないだろうが「祝市政110周年」となっている。さらに、市民芸術文化会館のパイプオルガンをイメージした3本のスターマインが打ちあがる。写真ではちょっと3本に見えないけど。さすが税金を使っている?だけのことはある(笑)。

スターマインの上側
ナイアガラの滝

 さて、時間も迫ってくると、残りの花火をどんどんと打ち上げはじめる。早打ちなんて物じゃない。観客は上を見上げたままで、首を休める暇もない。
 ひとしきり打ち上げ終わると最後を飾る恒例のナイアガラの滝。市内の幹線道路の一つである八千代橋に花火を仕掛け、ナイヤガラの様相を呈す。それと同時にフィナーレの大スターマイン。これは、上の部分だけでもカメラのフレームを横にしても入りきらないくらい大きい。写真では下のほうと上のほうで分けて撮ってあるので、頭の中で合成して想像してほしい。

 ナイアガラの滝はわずかの間に煙に覆われ、何がなんだかわからない状況になる。この辺は毎年の風向きによる運である。場所取りのときと花火の開始時、終了時でそれぞれ風向きが変わることもまれではない。
 

 すべての花火の打ち上げが終わると、対岸のいかだの上の花火師たちが手に持った色とりどりの花火を振る。観客は拍手でそれにこたえる。川幅が狭いからこそのコミュニケーションである。

 花火好きの人は、ぜひ新潟の花火を見に来てほしい。打ち上げ場所の正面に陣取れば、その大きさと音の迫力に圧倒されることであろう。花火は音も楽しむものなのである。
 
 

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