石焼きいも

 去年の やきいも では焚き火もどきで焼きいもを作ってそこそこの成果をおさめたが、焼きいもといえばやはり石焼きいもも試さないといけないだろう。
 そんなわけで、今回は家庭でできる石焼きいもにチャレンジし、まずまずの結果となったので報告する。

材料

なにはなくとも石

 石焼きいもというからには石が必要である。
 石の大きさは写真くらいのやつがいいように思える。
 直径1〜2cmくらいか。
 とある情報によると、親指大の石とその1/3くらいの石を組み合わせるといいらしい。
 できるだけ角の出ていない丸いもののほうがいもに喰い込まなくていい。
 定規の中でクックロビン音頭をおどっているやつのことは、今回の石焼きいもにとって重要でないので気にする必要はない。

 石の入手先であるが、最初に思い浮かんだのが神社の境内
 しかし、これはなんか御利益があるのかバチが当たるのかがはっきりしない。
 とりあえず近所の神社に行ったら、猫の額程度の参道はしっかり舗装されていた。

 次は園芸店
 ここの石は値段的にはそれほど高くはないが、大きめである。
 ちょうどいい大きさのを見つけたと思ったら、それは軽石みたいなやつだったり肥料だったりする。
 買う前にしっかり確認しておかないと、栄養豊富な石焼きいもができてしまう可能性があるので注意が必要。

 で、結局はただで入手できる河原や海岸の石に落ちついた。
 この石を拾うために、片道60kmの湘南の海岸まで有料道路を使って行ったのである。
 名付けて「湘南石焼きいも」。かっこいいのか情けないのかよくわからない。
 自然の石というのは大きさがまちまちなので、それなりにそろった大きさのものを拾うのには結構骨が折れる。

 別に洗わなくてもいいのだろうけど、海岸で拾った石は、火にかけるとなんだかミネラルな香りが漂う。
 そういう味の焼きいももいいかもしれないが、安物の鍋が塩分でよりいっそう劣化が早まりそうな気もする。
 天然の石は、使う前にやはり洗ったほうがいいと思う。
 結構洗ったつもりでも、思った以上にミネラルな香りは漂うので問題はない。
 

 次に用意するのは鍋である。
 これは、ほとんど空焚き同様になるので使い古した安物の鍋がよい。
 直径はいもの大きさに合わせて適当なものを選べばいいが、だいたい30cmくらい。
 これだと小ぶりのいもだと2本並べられるし、大きいいもでも半分に切って入れることができる。
 

さつまいも

 絶対に必要なのは材料となるさつまいも。
 これはやはり、有名どころのおいしいものを奮発してあげよう。
 有名どころといっても1本100〜200円くらいなので、屋台の石焼きいもを買うよりは安上がりである。
 ま、作ってみておいしかったらなんでもいいのだけど。

作り方

 鍋の底に2〜3cmの厚さになるように石を入れる。
 量はそんなに気にする必要はないと思うが、鍋の底が見えない程度には入れたほうがいいようだ。
 いもを置くところをちょっとへこませ、前もって洗っておいたいもを置く。
 いもについた水は無理に拭きとる必要はない。
 へこませるといっても、石はどんどん崩れてくるので、せいぜいいもの下のほうが平均して石にあたる程度で妥協する。
 石でおおいつくそうなどと思わないこと。無駄な努力である。

 写真のような感じになるのだが、ちょうどいい大きさの鍋を持っていなかったため、今回はわざわざ鍋を新調したので、鍋が妙に輝いてみえる。高級な石焼きいもである。
 ちょっと使い古したくらいのほうがおいしそうに感じるのは気のせいだろうか。

 鍋にふたをして火にかける。
 最初は石が冷えているので強火にする。(下の左の写真)
 15分ほど経ったらいもを1/4ほど回し、石にあたっている部分を変えてやる。
 再びふたをして今度は中火にする。(下の右の写真)

 10分ほど経ったら再びいもを回してあげる。
 また10分ほど経ったらいもを回す。
 これを繰り返し、一回りする頃には芯まで火が通っているはずである。
 時間にして40分くらい。
 この頃には皮がややこげかかるくらいになり、鍋のふたから蒸気が出てきていい香りが漂う。
 串とか箸をさして突きぬけるようなら大丈夫。

 調理時間の調節であるが、テレビを見ながらコマーシャルのたびにいもを回すようにすると、回すタイミングを忘れないでよい。
 回す方向を間違えて、同じ場所だけに熱が加わるようなことがないようにだけ注意すれば、ほとんど手をかけずにできるのでお手軽である。
 あまり頻繁にふたを開けると熱が逃げるのでよくない。中が気になっても我慢する。
 

 あとは取り出して食べるだけである。
 大きめのいもであれば、主食としても充分な量になるので、たまにはこういう食事もよいのではないだろうか。
 取り出す際、やわらかくなったいもの表面に小石がくっついていることがあり、それが手などにつくと思いっきりやけどをするので、取り出す際には必ず石を払い落とすようにすること。
 なにしろ熱いいもを持つ時の動作というのは、その石が手のひらに貼りつくのに最適なのである。経験者は語る。

 いもを真ん中から割ってみると、外周部分にしっとりとした部分があるのがわかると思う。
 この部分はかなり甘くなっている。
 それより中のほうはちょっとぱさぱさした感じ。
 外周のしっとりした部分を多くするには、火をやや弱めにして時間をかけて焼くか、できあがった後もふたをしたまま余熱で調理を続けるとよい。
 こうすることでより甘くなり、ぱさぱさ感が減って食べやすくなるが、冷めるとかたくなりやすい。
 この辺は好みで調節する部分であろう。

 ほうじ茶などと一緒に食すと非常に趣があってよろしい。
 

応用

 この調理方は、さつまいも以外にも使える。
 じゃがいもを調理し、十字に切れ目を入れてバターを乗せてジャガバターというのもかなりおいしい。
 茹でるのよりおいしさは上であるし、電子レンジなどは問題外である。

 玉ねぎなんかも甘く仕上がっておいしそうな気がする。
 どんな調味料が合うのだろうか。
 かぼちゃ、ニンジンなど、いろいろな野菜で試してみてはいかがだろうか。

 ステーキなんかもやってみたいが、石に肉の味が染み込むのが心配なのでちょっと試す気にはなれない。

 材料をアルミホイルでくるんでホイル焼きをするという調理方があるが、それに使うのもいいかもしれない。
 オーブンで調理するよりも味わい深い気がする。
 
 

うんちく

 おまたせしました、うんちくのコーナー。
 さて、なぜ石焼きいもはおいしいのか。
 これは、さつまいもの中にはβアミラーゼという酵素が非常に多く含まれていることに起因する。
 このβアミラーゼはデンプンを分解し、マルトースという糖分に変化させる働きをするのである。
 この変化がもっとも活発におこる温度が70〜80℃。
 石焼きいもでは、ちょうどこの温度で調理をすることとなり、甘みが増すのである。
 さらに、直火と違い、遠赤外線による調理なので中の方まで熱が伝わるため、全体の甘みが増す。
 つまり、甘さ加減は調理方によりある程度調整可能なのである。

 電子レンジなどは強火の調理なので甘みが出にくい。
 もちろん出力の調整ができる電子レンジなどでは甘味を出すことも可能だが、調理方として味気ない。

 いつだったか秋葉原で見かけた石焼きいもの屋台には「なぜ石焼きいもはおいしいのか、説明できる人には半額にします」と書いた札がさがっていた。
 よく秋葉原に行く人は、このうんちくを頭に叩き込んでいけば、食事代が浮くことであろう。


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