ヘリサート加工

ヘリサート加工って?

 あんまり耳慣れない言葉だと思うが、確かに一般的なものではない。
 勘のいい人は気付いたと思うが、例によって必要のない人には全く必要がないという特殊な作業である。
 だからといって難しいのかというとそんなこともなく、工具とやり方さえわかっていればその手の作業をする人にとっては非常に心づよい物である。

 で、どういうものなのかというと、つぶれてしまった雌ネジにコイル状の新しいネジ山を埋めこむことで修復するものなのである。

 雄ネジがつぶれた場合はネジを替えればすむが、車体とかエンジンブロックに切られている雌ネジがつぶれてしまったらそう簡単に交換するわけにもいかない。
 買えるものならお金を出せばなんとかなるかもしれないが、既に入手困難になってしまった部品に限ってこの手のトラブルがつきまとったりする。
 軽い損傷ならタップで修正可能だが、完全にネジ山がつぶれてしまった場合にはそうも行かない。
 ホームセンターなどでネジ山修復用として接着剤のようなものでネジの型を取るようにして復活させるものもあるが、力のかかる部分や振動の多い部分、ましてや再びネジ山が壊れては困るところに使うにはこころもとない気がする。

 また、アルミなどの柔らかい材質にタップを切った場合、何度かネジをつけはずししているうちに山がつぶれてしまうこともある。
 こういう場合には、最初からヘリサート加工をしておけば安心である。

工具は?

パッケージ表パッケージ裏  実を言うと、このヘリサート加工で最も難しいのが工具の入手なのである。
 通常のタップならホームセンターなどで入手可能だが、ヘリサート用の工具はなかなか売っていない。
 で、私が買ったのはストレートというショップ。
 とある作業でネジをつぶしてしまい、インターネットで検索していたらここが見つかったのである。
 商品名はリコイル(RECOIL)
 店舗一覧を見てみたら、なんと会社のすぐそばということで直接買いに行ってきた。
 ちょっと特殊なサイズのネジ(なぜかM7)だったので取り寄せとなったが、それでも3日で入手できた。
 頻繁にネジの補修をする人ならこの手のキットなんかが多少割安でいいかもしれない。

中身  中身はこんな感じ。
 左からネジとなるコイル、ねじこむ工具、ピンを折る工具、タップ。

コイル  コイルはこんな感じになっている。
 内側が通常の雌ネジと同じサイズ、つまり外側はそれより太くて同じピッチというものである。
 コイルの先が内側に折れ曲がっているが、ここに工具をひっかけて回しながらねじこむのである。

作業

下穴  コイル用のタップを切るために下穴を開ける。
 右側が穴を開けたもの。
 穴の大きさはネジのサイズによって異なるのでパッケージの説明を参考にする。
 当然もとのネジ穴より大きい。

タップ作業  で、付属のタップでネジを切る。
 この工具の値段のほとんどがこのタップの値段ということらしい。
 今回の作業ではM7用のリコイルを使用したが、手持ちのタップホルダーではぎりぎり保持できない太さであったため、タップホルダーのチャック部をばらして無理やり咥えさせて作業をしたため、もともとの穴がまっすぐ開いていなかったのに加え、このような作業方法のため斜めにタップが切れてしまった・・・。
 私は穴を垂直に開けるとかタップをまっすぐ切るとかという作業が苦手なのである。
 ま、使えたからいいけど。
 ボール盤があればタップをボール盤に咥え、手で回しながらタップを切ることでまっすぐ切れるのだが、あいにくボール盤は持っていない。

コイルセット  こんな感じでねじこみ工具の先にコイルをひっかける。

ねじこみ  あとはこのようにねじこんで行くだけ。
 入れるときにはコイルの直径が小さくなる方向に力が働くので簡単に入っていくが、入れすぎて逆転させようとすると直径が広がる方向となるのでまず抜けない。
 入れすぎないように注意が必要。
 工具のストッパー(というのだろうか?)が当たるところが目安。

ねじこみ  このように、ちょうど半回転ほど入ったくらいがよい(みたいだ)。
 後ろにあるのは撮影用に被写体の角度を調節するために入れたタップホルダーなので、特に意味はない。
 いいところまで入ったら付属の棒を突っ込んで先っぽの折れ曲がった部分を折る。
 これで完成となる。

やりなおし  もし失敗したらこのようにコイルを引き抜いて入れなおす。
 実は、最初はM6だと思ってヘリサートを行なったのだが、ネジが入らないことに気づき、しばらく悩んだ末にM7だということが判明したのである。
 おかげでこのような写真が撮れたということは幸運といってよいだろう。

 旧車のレストア等を趣味とする人は持っていて損はない、というか必要な物かもしれない。
 ヘリサートで復旧したネジは、本来のネジ穴よりも丈夫である。

 この工具、実はかなり便利なのでお気に入りの道具に入れたいところなのだが、ネジのサイズ毎に工具をそろえないといけない上にそれなりに高価なので惜しいところで別項目での紹介となったのである。
 そもそも今回私が買ったのがM7なので、他にそんなネジを使っているところは思い当たらず、存在としては使い道のない道具となってしまっている。
 一つの工具でM4〜M8くらいまでできれば間違いなくお気に入りとなるのだが。
 セットを買いたい気もするのだが、この手のよく使うサイズのなら会社にあるしなぁ。(こらこら)

 あなたの回りにつぶれたネジ穴はないか?。
 ヘリサートで人生のネジ穴を作りなおそうではないか。


 2006/04/23 追記
 ちなみにイリサートというものもあり、これは一般サイズのタップが使えるらしい。
 ただ、個人で入手可能なのかとか、工具・パーツの値段はどのくらいなのかは全く不明。

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