いつもの手順でサイドカバー、シート、タンクをはずす。
オイルホースもはずすが、この時にオイルが漏れてくるのでウエス(と名付けたぼろ布)をあてておく。
はずしたホースからもオイルがたれてくるのと、ゴミがつくのを防ぐためにビニールで覆っておく。
私にしてはまじめな作業である。
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オイルクーラーを固定しているボルトをはずし、エンジンをフレームに固定しているプレート前後2ヶ所をはずし、エキゾーストパイプをはずす。
このボルトはよく固着していて無理に回すと折れる可能性が高い。
そのため、一週間前から潤滑剤を吹きつけ、少しずつ緩めては締めこむを繰り返していた。
おかげでエンジン側のはボルトを折ることなく簡単に外れた。
もっともこちらはステンレスボルトなので丈夫だという声もあるが。
エキゾーストパイプとマフラーを繋げている部分のボルトは真っ赤にさびていたので同様に潤滑材処理をしていた。
このボルトはヘックスローブという特殊なボルトで、さらに錆まくってるいるうえに微妙にサイズの合わない安物工具なのでかなり不安だったが、少しずつ注意深く潤滑剤を吹きつつ緩めたので無事はずす事ができた。
このボルト、今回は再利用したが、できることなら新品を用意したほうがいいだろう。
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シリンダーヘッドカバーをはずし、チェーンテンショナーを緩めて(作業としてはネジを締めこむのだけど)カムシャフトをはずす。
そうそう、カムシャフトをはずす前に、カムとタペットのクリアランスを測定しておくとよい。
もし規定値でなかった場合はシムを交換することで適正値となり、エンジンの調子もよくなることであろう。
私はすっかり忘れていたが。
シリンダヘッドサイドのボルトをはずすが、これをはずすとカムチェーンがエンジンの中に落ちてしまうので針金等をつけておく。
写真だと見にくいが、よく見ると針金が見える。
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シリンダーとシリンダーヘッドを固定しているボルト(写真右側の抜けかけているボルト)をはずし、シリンダーとクランクケースを固定しているナット(レンチをかけているやつ)を緩めておく。
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シリンダーヘッド内側にあるヘッドとシリンダーを固定しているボルト2本をはずす。
長めのボックスレンチが必要だが、こんなんでいいのかと思うくらい簡単に緩む。
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次にシリンダーヘッドとシリンダーをクランクケースに固定しているボルト4本をはずす。
これは対角線上に少しずつ緩めるのだが、「カキッ」といって1/8回転ほど回ったあとは全く回る気配が無い。
ボックスレンチのエクステンションがねじれるだけで回す力がボルトに伝わらない。
ボルトが緩むどころか、ボックスレンチが壊れそうである。
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ということで、急遽自転車で工具を買いに走る。
なんかもう作業時の風物詩といってもいい感じである。
今まで使っていたのは3/8インチ(9.5mm角)と言うサイズのボックスレンチ。
で、こいつは1/2インチ(12.5mm角)のやつ。
レンチ自体はキックセット取り付けのときに買ってあったのだが、もっとトルクをかけやすい長いやつが必要な気がしたのでビットとともにエクステンションとレンチも買ってきた。
こういうときには最悪の場合を想定し、余裕を見て工具を買うのがポイントであろう。
使わないですんだのならラッキーということで。
エクステンションはもうちょっと短いほうがいいのだが、これしか売っていなかったので妥協。
で、このボルトへアクセスするには直径22mm以下の工具でないといけない。
買ってきたKTCの12mmのボックスのビットは店においてあった定規で計ったところ、ぎりぎり22mm。
ヘロヘロになって帰ってきて作業再開。
うげ、あと一歩というところでビットが入らない。
今から再び買いに行くのもなんだし、入らないものは入るようにすればいいのだからと、おもむろにマジカットヤスリを取り出して外側を削る。
意外と削れるもので(笑)、ぎりぎり入るサイズに。
再びボルトはずしを再開。
なんだけど、なかなか緩む気配がない。
ダメで元々ということで思いっきり回してみる。
カキッ、カキッと不気味な音をさせてボルトがゆるんだ。
対角線上に少しずつ緩め、無事成功。
確かにこれじゃ9.5mm角+エクステンションじゃ緩まないよなぁ。
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はずしたボルトはこんな形状。
シリンダーとシリンダーヘッドを共締めしているため、これだけの長さがあるうえに、頭とネジの部分以外が細くなっている。
ボルトもかなりねじれていたんだろうなぁ。
頭のほうに鍔がついているが、この鍔とシリンダーヘッドの間に厚さ2mmほどの銅ワッシャーが入っている。
この銅ワッシャーにはシリンダーヘッドのアルミが噛みこんだあとがある。
つまり、このワッシャーとボルト、シリンダーヘッドとの摩擦もかなりあるということだろう。
ちなみにこの銅ワッシャーは注文していなかったので再利用した。
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はずしたシリンダーヘッド。
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シリンダーヘッドの燃焼室側。
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シリンダーヘッドをはずすとピストンが見えてくる。
かなりカーボンが堆積している。
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シリンダーとクランクケースを固定しているナットをはずし、プラスチックハンマーでシリンダーのフィンのない部分を叩いてクランクケースに固着したシリンダーを取りはずす。
シリンダーの中には傷等見当たらなく、かなりきれいであった。
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これがピストン。
昔のバイクと違って、ピストンも軽量化のために平べったくなっている。
汚れてはいるが、吹きぬけのようなものは見当たらない。
昔のバイクはピストンとコンロッドの間にローラーベアリングがはいっていたのだけど、今時のはそういうのもないんだねぇ。
オイルの潤滑のみで摩擦を減らしている。
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これもちょっと見づらいが、DJEBEL250XCはタンク、サイドカバー、シートをはずしただけでエンジンの腰上を取りはずすことができる。
車種によってはエンジンをおろす必要があるらしいが、エンジンを降ろさなくていいというのはありがたいことである。
写真のとおり、既に夕方となってしまったので屋外の作業はここまで。
一番時間&体力を食ったのは工具の買い出しという噂も。
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さて、ここからは屋内作業。
タペットをはずし、シムをはずす。
これはバルブと共にもともとついていた場所毎にまとめておく。
混在するとバルブのクリアランスが変わってしまう危険がある。
一番いいのはシムを何種類も用意しておき、組み付けるときに指定クリアランスに合わせてシムを選択することなのだが、そこまでするのも面倒だし、現時点でクリアランスが正常であればそれをそのまま使うのが素人というものである。
Cクランプとかシャコ万とか言われているものを使用してバルブスプリングを圧縮する。
本当はバルブスプリングコンプレッサという専用工具があるのだが、万力教の教祖としてはわざわざそういう工具を買うようなことはしない。
写真左上で万力様が見守ってくれている。
シリンダーヘッドの高さを見ておき、充分長さのあるクランプを1,500円ほどで買ってくるのである。
このクランプ、咥える幅の調節が簡単なのと、バルブにあたる部分が可動になっていてバルブに対して斜めに当たってもちゃんフィットするようになっている。
さらに、ゴムのカバーがついているのでバルブに傷をつける心配がない。
カバーがなけりゃ折りたたんだ新聞紙でも挟んでおけばいいのだが。
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バルブのステム側はこんな感じ。右の画像はバルブスプリングを圧縮している部分を拡大したもの。
中央にバルブステムがあり、それを囲むようにコッタピンがある。
よく見ると、コッタピンは2分割構成になっているのがわかるだろう。
(よく見てもさっぱりわからないけど)
スプリングを縮めてこのコッタピンをピンセットで取りはずすことでバルブスプリングを押さえているワッシャーのようなもの(リテーナ)が抜け、バルブスプリングやバルブをはずすことができる。
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Cクランプの先についてたのはこんなやつ。
水道管のパーツである。
値段としては100円もしないが、この形状にするためにヤスリがけが必要で、水道管とともに体力もかなり削りとられた。
外形、内径のサイズだが、バルブスプリングも交換するために買ってあるので、その寸法を参考にすればよい。
スプリング(正確にはリテーナ)を押さえるのだから外周内周ともスプリングと同じくらいのものであればいい。
ホームセンターに行けば適当なパイプが手に入るだろう。
高い工具を買うのがいやなら知恵と体力を使うのである。
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さてお待ちかね、いつもの「しまった、ネジをなめてしまった」のコーナー。
ひび割れてきたインテーク(キャブレターとシリンダーの間にある部品)を交換しようとしたところ、ネジの頭をつぶしてしまった。
このネジ、ネジロックがついているので簡単には緩まないのである。
2本のうち1本ははずせたのだが、もう一本がどうしてもはずせない。
ショックドライバーでたたこうとしても、形状の関係でしっかり押さえることができず、頭をなめてしまったのである。
さて、こういうときはどうするのか。
まず、電動ドリル(根性があれば手動でもいいけど)でネジの頭を落とす。
ネジの部分の直径より大きい刃を使えば簡単である。
注意するのは、頭がぎりぎり落ちる程度でやめておくということ。
これでインテークをはずすことができる。
あとは写真のようにグリッププライヤーでしっかり噛んでネジをはずせばよい。
ホームセンター等で折れたネジを抜くための工具が売られているが、これはぜひ買っておきたいところである。
本当に使えるのかどうかは謎だが、おまじないとしての効果は高いだろう。
「いざとなれば最後の手段がある」と思えば作業もうまく行くものである。
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シリンダーヘッド、バルブに固着したカーボンを落として組み付けた状態。
本当はきれいに磨きたいところなんだが、この時点でかなり疲れていたので汚れを落としただけでよしとする。
一晩洗浄液につけておいての作業である。
バケツとかせんべいの缶とかなかなか便利なものである。
一番苦労したのはシリンダー下面のガスケットはがし。
紙のような樹脂のようなガスケットなのだが、これがカッチリと固まっていて全然取れない。
短気を起こしてヤスリで削ったら、シリンダーにしっかり傷がついてしまった。
刃の幅の広いカッターを使い、ちょっと使ったら刃を折るようにすれば多少は効率が上がるが、刃をけちったため(というか、こんなにすぐに刃がつぶれるとは思ってなかった)に作業効率が落ちていたのである。
そんなこんなでエンジン回りの作業で一番大変なのはガスケットはがしだという結論である。
それでもはずした時の写真に比べるとかなりきれいになっているのがわかると思う。
今回使用した洗浄液は、ファクトリーミルウォーキーの花さかGシリーズ、マルチクリーナーというもの。
油でもないし揮発性でもない、なのに油汚れがきれいに落ちる。
マルチクリーナーで洗浄したあとは水でマルチクリーナーを洗い流し、ウエスで拭くだけである。
油膜がすっかり落ちてしまい、下手するとすぐにさびが出てくる。
オイルをつけてもいい部品であれば、すぐにオイルを塗っておいたほうがいいだろう。
そのくらい脱脂効果が強いのである。
揮発性じゃないため、バケツにとっておいて効果がなくなるまで延々使い回すことができる。
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左がはずしたピストン、右が新品。
新品のなんと美しいことか(笑)。
ちなみに、ピストンにピストンリングを組み付ける際、サービスマニュアルにはオイルリング以外に1stリングと2ndリングがあると書いてあるが、リングセットの中に入っていたのは1stリングが2本。
はずしたものを見ると明らかに形状の違うリングなのだが、新品のはどう見ても同じ物。
とりあえず組み付けたが、全く問題なく使えている。
ある情報によると、これは私のものだけがそうなのではなく、他の人の買ったものも、パーツセンターの在庫のものもそうなっているとのことである。
部品の入れ間違えか、それとも高性能化のために(笑)2ndリングを廃止したのかは謎である。
ピストンにピストンピンを入れる際、Cリングでピストンピンが出てこないようにするが、このCリングがなくしやすいので、不安な人は余計に買っておいたほうがいいかも。
更に、きっちりはめておかないとトラブルの元になるので作業は確実に。
なお、マニュアルにも書いてあるが、この手の常に潤滑されているパーツを組むときには、必ず各パーツにオイルを塗っておくこと。
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ここまでくればあとは組むだけである。
なので写真は撮っていない。
というか、疲れ果てた上に時間が押してきたので写真を取っている余裕がなくなってきたのである(笑)。
まあ、ばらすことができたのだから組むことに関しては問題はないだろう。
そんなわけで、あとは省略(笑)。
今回買ったパーツ
価格は2002年10月時点のもの。
パイプアッシ、インテーク | 13101-13E00 | @1,800 |
Oリング | 09280-41007 | @340 |
スクリュ6×16 | 09126-06014 | @110×2 |
ピストン | 12111-13E00-0F0 | @4,250 |
リングセット、ピストン | 12140-31E60 | @2,700 |
ピン、ピストン | 12151-17C00 | @750 |
スナップリング | 09381-19001 | @70×2 |
スプリングセット、バルブ | 12920-13E00 | @640×4 |
オイルシール4.5×10×8 | 09289-04002 | @290×4 |
ガスケット、シリンダヘッド | 11141-13E00 | @1,600 |
ガスケット、シリンダ | 11241-13E10 | |
ガスケット、エキゾーストパイプ | 14181-40C00 | @380 |
ボルト8×25 | 09106-08104 | @130×2 |
後日談
さて、この手の作業をしたあとは軽く走って慣らしをする。
最初はおとなしく近所を走り回り、通勤に使い、じょじょに遠くまで行き、走行距離とともに回転もあげるようにしていく。
今回はだいたい300kmくらいまでおとなしく走り、500kmくらいまでは無理な負荷をかけないで時々高回転を使うようにしてみた。
最初は軽いけどスカスカ、みたいな感じだったのが、距離を稼ぐごとにだんだんトルクが出て来るのは楽しいものである。
で、ある日、ふとエンジンを見ると・・・。
オイルがにじんでいるではないか。
一般道を走っているぶんには「にじんでいる」で済んでいたのが、高速を走るとはっきりとにじみが広がっているのがわかり、表面がべたついている。
場所からしてヤスリで削ってしまった辺り。
まあ、指で触ってはっきりとへこんでいるのがわかるくらいだったからなぁ。
てなわけで、再び開けて該当部分に液体ガスケットを塗って組み付ける。
まずいことにガスケット類を買わずに開けてしまったため、ガスケット類は再利用。
使っていた期間が短かったためガスケット自体はそれほど痛んではいなかったのが幸いである。
念のために全体にごく薄く液体ガスケットを塗っておいたが。
さすがに二回目の作業ともなると慣れたもので、夜にばらして次の日の午前中に組みあげることができた。
その後、オイルにじみもないし再利用のガスケットによる圧縮もれもおこっておらず、エンジンは快調に回っている。
パワーも絶頂期とまでは行かないまでも、かなりいい線いっているような気がする。
今のところオイルも減っていないようである。
時間はかかるが、工具さえちゃんとしたのを使えば作業自体はそれほど難しくない腰上オーバーホール。
そろそろエンジンがへたってきたなと感じたらやってみる価値はあるかと。
昔のバイクはやるのが常識だったんだけどね。
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