2,002年もあと数日で終わろうとしているある日ののどかな昼下がり、ふとメーターを見るとこのバイクご自慢のデジタルメーターの表示が消えている。
メーターの故障か、それとも電源関係のトラブルか。
確か、メーターがつかないくらいまでバッテリーを消費するとCDI点火のこのバイクはエンジンが止まってしまうはず。
すりぬけをしている最中、予想通りエンジンが止まった。
路肩に止めていろいろ試すが、セルが回らない。
明らかにバッテリーが放電し切っている。
スペシャルな私のDJEBEL250XCにはヘッドライトスイッチがついている。
ヘッドライトを消すと、メーターの表示が復活する。
キックをするとエンジンがかかる。
これならということでヘッドライトを消したままタイヤを買ってアパートに帰りつく。
バッテリーを充電しつつメーター回りをばらしてみると、線がこすれて被覆が切れそうになっている場所を発見。
こいつが原因かと思いつつ、自転車のチューブを巻きつけて組みあげると、ヘッドライトもつくしセルも回る。
とりあえず一安心である。
年が明けて帰省から帰ってきて、念のためにとエンジンがかかることを確認。
せっかくだから用心して、充電電流の測定。
・・・・・充電されていない。
サービスマニュアルに従い、電装系のチェックを行なう。
まずレギュレーターレクチファイヤー。
つまり、発電機からの交流を直流にし、さらに電圧を13V程度に安定化させている部品。
サービスマニュアルによると、正常なものは端子間の抵抗値が数Ωとか書いてあるが、私のデジタルテスターでは無限大である。
ここで慌ててはいけない。
こいつの中身はダイオードとサイリスタ、サービスマニュアルではアナログテスターでの測定となっているので抵抗値となっているが、デジタルテスターならばダイオード測定モードに設定して測定をするのである。
順方向で0.5〜0.7V、逆方向で無限大であれば大丈夫。
ということで、こいつは問題なし。
次にステーターコイル。
コイルが3相なので、それぞれのコイルにマニュアル通りの抵抗(ほぼ導通)があればOK。
んが、3相のうち2相に導通がない。
多分、2つの相がつながっている線のどこかが切れたな。
このバイク、走行距離が5万キロに達するとこのコイルが切れるという話を聞く。
私の知っている人でも今まで2件聞いていて、私ので3件目だ。
これが5万キロ寿命伝説である。
時間は19:30、たしかパーツ屋さんは年末年始のセールでこの時間までやっているはず。
慌てて駆け込み、パーツを注文する。
どうやら閉店に間に合った。
価格は2,003年の1月時点のもの
部品名 パーツナンバー 価格&個数 マグネトーカバーガスケット 11483-13E00-000 @650 ステーターAss'y 32101-13E02-000 @23,400 スクリュー 02112-05103-000 @50×2 スクリュー 02112-05253-000 @50×3 レクチファイヤAss'y 32800-13E10-000 @14,700
新年早々4万円の出費はかなり痛い。
ガスケットは、マグネトーカバーを開ける際に破損してしまうので必ず注文する必要がある。
ステーターAss'yというのが今回のメイン。
スクリューは、この手のエンジン内部のネジというのはだいたいネジロックで固定されているので再利用しにくいうえに、はずすときになめる可能性が高いので念のためにいくつか頼んでおく。
レクチファイヤAss'yは壊れていないのだが、私のやつは電圧が低いのでついでに交換。
ついでというには高いのだが、パーツナンバーが13E00から13E10に変わっているのでひょっとしたらなにかあったのかもしれないという期待も込めて。
ちなみに、ステーターAss'yも13E00から13E02に変更になっている。
ステーターが02に対して、レクチファイヤが10ということは、かなり変わっていると思えてしかたがないのである。
新年早々パーツを頼む人はいないのか、日曜に頼んで水曜には入荷していた。
やればできるじゃないか>スズキ
いよいよ作業開始である。
作業の内容はオイル漏れ修理とほぼ同様で、それに加えてステーターコイルの交換があるだけである。
内容的には予測がついているのでそれほど難しくはない。
写真がステーターコイルAss'yである。
Ass'yとなっているのは、発電用のステーターコイルだけではなく、点火タイミング用のピックアップコイルと接続用のコネクタがついているからである。
さすがにバラで売るわけにはいかないだろう。
こちらは取りはずした古いコイル。
コイルを取り付けているネジは、本当にこんなんでいいの?と思うくらい簡単に取れた。
訳あってコネクタ側の線を切ってある。
切ったついでに導通を計ってみるが、やはり2相で導通がない。
どうやらこことコネクタの間での断線ではないようだ。
色が妙に黒っぽい。
それにしてもPowerShotG1はホワイトバランスがおかしい。
自動だと何を撮っても青くなるので、自分でホワイトバランスを選ばないといけない。
左が新しいもの、右が古いもの。
古いものは全体的にコーティングされているが、新しいものは線が剥き出しである。
線の巻き方も微妙に違うように見える。
裏表を逆にして撮ったのかなぁ?。
ちなみに、古いほうはケーブルを固定していたインシュロック(ケーブルタイともいうやつ)が切れていた。
スタータアイドルギアNo2のワッシャーが一枚マグネトーカバー内に落ちていたのは見なかったことにしよう(笑)。
ひょっとすると、断線の原因はこいつかなぁ。
けど、どこにも傷とかないし。
やはり寿命ということにしておこう(笑)。
さて、いよいよみなさんお待ちかねのトラブルの時間。
コイルの取り付けネジが妙にゆるかったのに対し、こちらは妙に固い。
ショックドライバーで叩いてもネジの溝がつぶれてしまって回らない。
知恵と勇気が試されるときである。
最悪は、ネジの頭をドリルで飛ばしてそこに新たに穴を開け、専用工具(バラソルチョコレート状の逆ネジタップのようなもの)を使って抜けばなんとかなるだろう。
しかし、その工具を買いに行くには体力を必要とする。
そう、自転車で20分近く坂を登らないといけないのである。
やはりお金と体力よりも知恵と勇気を使うほうがいいと判断した私は、ナイフを作ろうと取ってあった折れた金ノコの刃を使ってネジの頭にマイナスの溝を切った。
長い刃は入らないので折れた刃を直接手で持ってほんの数cmのストロークで溝を掘っていくのである。
溝が広がらないよう、慎重に確実に作業をする。
ここまで来たらショックドライバーにマイナスのビットをつけて叩く。
マイナスのほうがプラスよりも回転力は強い。
何度かなめそうになったがちゃんと外れてくれた。
勝利である。
こういうこともあろうかと新品のネジを買っておいたので、余った古いネジをここに使ってあげる。
ちなみに、エンジン内部のネジはとれると厄介なのですべてネジロックをつけて締めこんである。
あとは組み付けて完了。
これがついでに交換したレクチファイヤー。
実はこれを固定しているネジも一つなめてしまったが、しつこくショックドライバーで叩いたらはずすことができた。
ま、ここのネジはエンジン内部と違って簡単に交換できるので、そのままなめたネジを使って固定。
というか、通常ならば二度とはずすことはない場所なんだが。
で、交換した結果、充電電圧が約5,000回転でも14V前後となった。
今までは、かなり走り回っても補充電するとそこそこの充電が行われたのだが、交換後はほとんど補充電の必要がなくなった。
これでバッテリーのトラブルも減ってくれるといいのだが。