波形のなまり

 日記もどきに「波形がなまる」とか書いたら一部からそれってどんなこと?という質問が出ているような気がしてきた。
 そんなわけで、わざわざ会社でそれっぽい波形を作ってみた。
 電気のことがわからない人に「なんとなくこういう物らしい」と理解した気分になってもらうために、本当に波形をなまらせたわけではなくなまったように見える波形を用意しただけの事なんで、専門家の人は細かいことを突っ込まないように。

普通のクロック これがいわゆるクロックとかいわれている波形の正体。矩形波という種類で名前の通り四角い形をしている。
 横軸が時間で縦軸が電圧。時間とともに波形が上に行ったり下に行ったりしているのだ。

なまったクロック 周波数が高くなったりして波形を出力する素子の性能が追いつかなくなってくるとこのようにサイン波みたいになってくる。

普通のクロック拡大 デジタルの世界では物事が1と0に区別されている。
 この波形で線が下にある時は0、上にある時が1というわけだ。0と1の間は限りなく垂直に近い(時間が限りなく0秒に近い)のが理想なのだが、現実にはわずかだが斜めになっている。
 しかし、この波形みたいに0とか1とかの幅(=時間)に対して無視できるくらい垂直であれば普通は問題にはならない。

なまったクロック拡大 なまった波形を見てみると、0とか1の幅に対してその間の斜めの範囲がかなり広い。
 この斜めの部分は0でもないし1でもないと判断されるデジタルとは呼べない部分である。
 さらに波形がなまって0と1の部分がなくなってこういう斜めの部分だけになってくるともはやデジタル回路とはいえなくなって来るのだが、それでもデジタルとして扱わないといけないのである。
 そんなわけで、デジタル回路をつきつめるとアナログ高周波回路になる、などといわれるのである。

 ちなみに、SCSIとかATAPIなどでデータ幅が8bitとか16bitとかいうのは、こういうクロックの線が8本とか16本とか並んでいるのである。
 データ転送速度が高速になるにつれ、それぞれの線の信号の駆動力とか負荷とかのばらつきでこの斜めめの部分が8本あるいは16本すべて同じタイミングになる可能性が低くなり、正確なデータの転送が行われなくなるため、高速化が難しくなってきた。ならば複数の信号線を使うのをやめて1bitのみにしてデータを送ればタイミングを合わせる必要自体がなくなるので高速化が可能になるじゃん、というのがシリアルATAとかの考え方。

 なんだけど、16bitを1bitにして同じ時間内に同じ情報を送ろうとするには16倍速いクロックを使わないといけないんで、より一層苦しくなるんじゃないかなぁ、などとシリアル伝送の高速化に疑問を持つ私なのであった。

 そんなわけで、クロックがなまるという事はどういうことかかわってもらえただろうか。
 わからなくてもわかったような気分になってくれればそれでいいので、知らない人に対して偉そうに説明ぶっこいて知ったかぶりっこするのもいいだろう。
 質問を受けたら「そのくらい自分で調べろ」と冷たく突き放せばいいのだ。わはは。

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