使えない道具

 売っているのをみるととっても便利そうに思え、ついつい買ってしまった道具類。
 でも、実際に使ってみると限られた条件でしかその機能を発揮できないという使えないもの。
 それでもやっぱり買ってしまう不思議な魅力のある物たち。
 で、おもちゃ箱によくわからない道具がたまっていく・・・。

バイクウォッシャー
METEX(R) M-3850
スピードレンチ
電動歯ブラシ
高効率バルブ
ベンチバイス
ウインターグローブ
 


バイクウォッシャー

 一見銀色の消火器にしか見えないこれは、バイクウォッシャーという物。宮田工業製。
 MIYATAという名前に心当たりのある人も多いと思う。
 そう、消火器メーカーとしてよりも自転車メーカーとしての方が有名である。
 ここのホームページ(http://www.gear-m.co.jp/main01.htm)を見ても、自転車のことは書いてあっても消火器の製品説明は書いていない。
 わずかに会社の歴史のところに日本で最初に粉末消火器を作ったと書いてあるだけ。

 消火器と異なるのは、レバーのところに圧力計がついていることとボディにバルブがついていること、それとノズルの先端形状くらい。
 

 ボディ横の金色の部分がキャップになっていて、そのまま外れるようになっているのでそこから水を入れる。
 水の量はボディを立てた時にこの穴から水が出なくなる程度。この穴の位置が水の量を決める構造になっているところがなかなかに工夫されている。

 キャップを締め、バルブに空気ポンプを取り付けて空気を入れる。
 バルブの形状は自動車のものと同じである。
 

 空気の量は7〜9.8kg/m^3。とか書いてもほとんどわからないだろうが、この製品には圧力計がついている。
 左端にある赤い針が緑の中に入るまでとにかくポンピングすればOK。
 自転車用の空気入れで入れることも可能だが、私がやった限りではやっと緑のところに入るくらいが限界。

 あとはノズルを対象物に向けてレバーを握るだけ。
 消火器よりもノズルが細いのでより細く水が集中するかと思いきや、それほどでもない。ま、このくらいの方が汚れを洗い落とすにはちょうどいいのかも。
 その威力はというと、コンクリートにへばりついた こけ がはがれ落ちるくらい。
 バイクの泥を落とすには充分な威力を持っている。
 

 実はこの装置、結構気に入っているのである。
 ではなぜ「使えない」と評価しているのか。
 まず、水を入れるのに本体の大きさの関係で台所などではちょっと苦労する。
 それに空気を入れるのが大変。緑の範囲目いっぱいに入れてみたい所だが、そこまで入れるのはほとんど不可能
 その割に放水時間が20〜30秒と短く、最初の威力を持続させるには途中で空気を入れたくなる。
 はっきり言って、私のアパートみたいに洗濯機が外にある所ではバイク等の洗車をするにあたっての水の手配に事欠かない。わざわざ苦労をして使うほどのものではない。

 ただし、水道が近くにない場合には大変ありがたいしろものと思える。
 本来の使用方法がMTB等のバイクレースで競技終了後に手軽に泥を落とすという物である。
 出発する前に水と空気を入れておけば泥が固まる前に落とすこともでき、トランポの汚れも少なくできる。
 水と空気ポンプさえあればどこでも高圧の水流で洗えるのは強みであろう。
 

 私の環境で実用性を求めるとすると「使えない物」である。
 でも、個人的にはこういうのは結構好きである。
 誰でも一度は消火器のレバーを握ってみたいと思ったことはあるだろうが、むやみにそれをやるとあとが大変である。しかし、これを使えばごく手軽に消火器ごっこができるのもなかなか楽しい。浪漫である。
 焚き火をしてそれを消してみたいぞ。
 

 それにしても銀色の消火器風、ちょっとかっこいいかも。
 所有欲は充分満足できる。
 


METEX(R) M-3850

 このタイトルを見ても、ほとんどの人はなんの事なのかわからないと思う。
 簡単に説明すると、テスターである。電圧とか抵抗とかを計るやつ。
 何しろ韓国製なので、普通の店ではお目にかかることはまずないと思う。売っていたのは秋葉原にある、知っている人には有名な秋月通商

 

 まずはケースの写真。
 なんか辞書でも入っていそうな重厚なデザイン。更に金文字である。
 仕様として目立った点としては、周波数、容量、トランジスタの増幅率、温度、ロジックレベル等の測定ができること、更に測定データをシリアル通信でパソコンに送ることができる。
 表示はメインとサブの2つのデジタル表示と、アナログテスター的な使い方もできるアナログメーター風の目盛り表示。
 いろいろな機能が付いていて、なかなか便利そうである。値段は13,000円くらい。それにつられて買ったわけだけど。
 興味のある人はトランジスタ技術等の秋月の広告を見てほしい。
 


 ケースを開けてみると、こんな感じ。
 左側に転がっているのがテスターリードと黄色いソケットのついた温度プロープ。本体にも温度センサーが付いているので、切り替えることでこのプローブの温度と室温の2種類が測定できる。
 ケースの中に束ねてあるのがシリアル通信用のケーブル。
 このほかにマニュアル一冊とデータ通信用ソフトがフロッピーでついてくる。データ通信ソフトは秋月オリジナルのPC-9801用のものも入っている。さすがは秋月、まめである。これを買った当時はともかく、今では9801シリーズを使っている人って少なくなっているよなぁ。でもやっぱり付属しているんだろうな。
 


 本体はこんな感じ。
 デザイン的にはちょっとなぁ、というところだが、測定器はまずは性能。

 とりあえずスイッチを入れてみる。バックライトが光るが、起動しない。いったんOFFにして再投入。「ピピッ」と言って起動する。なんかだ。秋月に聞いてみたら「最初は電源スイッチを2回ONにするのが仕様」らしい。でも、一回で起動するときもある。この時点で既に怪しい。まぁ、電源は入るからいいか。
 ちなみにマニュアルは英語なので、本当に店員の言った通りなのかどうかは不明

 次に抵抗を測定してみる。
 無限大から0Ω付近になるまでに2秒ほどかかる。ちょっと遅くないか?。
 導通チェックを行ってみる。
 リード先端ををショートしてからブザーが鳴るまでやはり2秒ほどかかる。これでは使い物にならない

 この反応の遅さはすべての測定において共通。これは内部のA/D変換の方式によるものだろう。時間をかけて測定することで、安い部品を使っても精度をよくすることができるのである。もちろんちゃんとした製品は短時間で精度よく測定している。

 シリアル通信機能を試してみる。
 これは結構おもしろい機能で、無人で長時間の測定データをを記録することができる。もちろん本体の性能があれなので、ゆっくり変化するものしか測定できない。
 で、付属のソフト(DOS版)がうまく動かない。データ自体はちゃんと取りこめているのだけど、グラフの表示とかの設定がうまくできない。付属ソフトがこれではかなり印象を落とす。

 日曜大工的に使うにはいいのかもしれないが、それならもっと安いもので足りるはず。本格的に使うとすると反応が遅すぎる。
 これを買うのなら、もう1万円出してサンワの新しいモデルを買うことをお勧めする。これならWindows版の割とまともそうな計測ソフトがついてくるらしい。
 実はちょっと欲しいと思っているのである。

 通信機能はいらない、高くても性能のいいのが欲しい人にはFLUKE87を勧めたい。メーカー名だけでハッタリが効く(笑)。もちろん性能もいいけど。


スピードレンチ

 これはいったいどういう物なのか、知らない人が多いかもしれない。
 こんな感じの工具で、最近はホームセンターなどでよく見かける。

 スピードレンチ、あるいはクイックレンチなど、メーカーによりいろいろな呼び方があるが、要は上の写真のようにギザギザの歯のついた口があり、片方がバネで閉じる方向に押しつけられる形状のレンチである。
 

 左の写真のように、ボルトやナットを噛み込み、柄を下方向に回すことでさらに噛み込む方向に力が働き、ナットをしっかりと回せるというものである。
 逆に、柄を上方向に回すとナットから外れる方向に力が働くので、柄を上下に動かすことでどんどんとナットを締めたりはずしたりできるのである。
 通常のスパナだと、ナットを少し回すごとにいったんスパナをナットからはずして、新たにかけなおすという作業が必要となり、この工具のように連続して作業を進めることができない。
 もう一つ、バネと柄を回す力でナットを咥えるため、使えるナットの大きさにある程度の幅がある。
 通常のスパナでの作業だと、ナットの大きさの種類だけスパナを用意する必要があるのに対し、このレンチだと大・小の二種類を持っていればほとんどのナットに対応できる。
 物によっては、柄の両端に大・小の二つのレンチがついていたりするので、これなら一本で済むわけだ。

 と、これだけ書くと「なんだ、便利な工具じゃないか」と思うだろう。
 確かにお店の方でもこの点を強調して、いかにも便利そうに売っている。
 ところが、実際に使ってみるとこれが結構使えないやつなのである。
 便利工具の典型みたいな感じ。
 では、どこが使いにくいのか。

 このレンチがちゃんとボルトやナットを咥えるためには、左の写真のようにボルトの角とレンチの溝がきっちり合っていないといけない。
 つまり、ボルトとレンチの位置関係が直角でなくてはならないのだ。
 柄を握るためには、機械の平面部と柄の間に手が入るだけの隙間が必要である。つまり、このレンチを使うためにはその分ボルトの頭がでっぱっていないといけないわけだ。
 水道の蛇口のような場所では問題ないだろうが、普通の機械のメンテだとこのような理想的な角度で工具をあてられる場所というのは限られている。
 そういう理由があるので、通常のメガネレンチなどには角度が付いているのである。

 もう一つ、なんといってもボルトを加える部分が大きいこと。
 これはモンキーレンチなどにも言えることであるが、最近のオートバイなどはただでさえ工具を入れにくい構造(つまり、メンテをしにくい構造)になってきているので、これだけ頭が大きいとかんじんのナットのところまでレンチが届かない場合が多い。

 また、最初の方に書いたように、連続して動作ができるように思えるが、実はナットがゆるんでくると柄を反対側に回してもナットが一緒に回ってしまい、期待した動作ができない。
 その際の作業性は、通常のスパナよりもはるかに劣るのである。

 さらに、こういう邪道な工具はボルトやナットに傷を付ける危険が常にある。
 ちゃんとしたメンテが必要な機械には使わないようにするのが無難だろう。
 一般家庭において、水道の蛇口とかその程度の作業と割りきって使うのであれば、それほど悪い工具ではないかもしれない。
 同じような邪道な工具でも、ロッキングプライヤーは応用範囲が広いので使えるほうに分類したが、このレンチはこれしか使い道がないので使えないほうに分類されてしまった不憫なやつである。


電動歯ブラシ

 私は電動歯ブラシを愛用している。
 使うようになったきっかけは、友人が「電動歯ブラシは結構いいぞ」と盛んに奨めたこと。
 遺伝なのか生活環境なのかは不明だが、もともと虫歯になりやすいうえに子供のころの歯の矯正の跡が残っており、いっそう虫歯になりやすい私としては、歯磨きに関しては日頃より注意したいと思っていたのだ。
 ここ数年はだいたい年に一回くらい歯医者に行って虫歯のチェックと歯石落としをやってもらっているが、意外と虫歯はないようなので、電動歯ブラシというのは結構使えるしろものなのだと認識している。

 で、なぜにその電動歯ブラシが使えない道具(道具ではないんだけど(笑))に分類されているのか。
 いつも使っている電動歯ブラシはサンスターの G・U・M というやつ。
 上記のように、これには満足しているのだが、ケースの色が黄ばんできたのと、電池やスイッチの接触不良が起こるようになってきたので、新しいのにしようと買ったのが写真のもの。

 OMRONのShuShu(シュシュ)という製品である。
 値段が安かったのと「ハイパワー」と書いてあるのに惹かれたのである。
 きっと効率のよいモーターを使っていて、電池が弱ってきても頑張ってくれるのだろう。
 と、思って買ってきたのだが、甘かった

 とりあえずパッケージを開けて電池を入れてみる。
 今まで使っていた電池は充電式のニッカド電池。
 スイッチを入れると動き出すが、心持ち元気がないようだ。
 ブラシの部分を触ると、ちょっと力を入れただけで簡単に止まってしまう。
 電池が弱っているのかと思って充電したばかりの電池を入れてみる。
 やはり弱い。
 今まで使っていた電動歯ブラシにその電池を入れると元気に動く。
 いったいどういうことだ?。

 パッケージをよく見ると、ブラシの左側に小さい字で「アルカリ単三形乾電池専用」と書いてある。
 一般の電池は1.5V、ニッカドは1.2Vで確かに電圧が低い。
 しかし、今まで使っていた電動歯ブラシはそれでもちゃんと動いていたのだ。
 いったいこれのどこがハイパワーなのだろうか。
 要ハイパワー電池の間違いではないのか?。

 ニッカド電池でこのくらいの動きだとすると、アルカリ電池を使ってもちょっと電池が弱ると動かなくなるということである。
 これではランニングコストが高すぎると思う。
 毎日のように使うものであるから、ランニングコストを押さえるために、マンガン電池でも充分動くモーターを使うべきじゃないのだろうか?。

 そんなわけで、残念なことに「使えない」と判定されてしまったのである。
 結局もうしばらくは G・U・M を使いつづけることとなった。


高効率バルブ

 道具とはいえないが、あまりも使えなかったのでここのネタとした。

 最近のオートバイのヘッドライトはほとんどハロゲンランプとなり、昔に比べるとずいぶん明るくなった。
 特に私の乗っているオートバイは大口径ヘッドライトのため、かなり明るい。
 それでもやはり「もうちょっと明るくしたい」と思うのである。

 以前であれば、ハイワッテージのバルブを入れることになるのだが、そうすると必要とする電流を流せるように配線を太くしたり、配線のロスを減らすためにリレーキットなどを組み込まないと本来の明るさを得ることができない。
 それ以前に、自分のバイクの発電量が足りないと、かえって暗くなるだけとなる。

 ところが今は、ワット数は同じで明るいという高効率バルブが売られている。
 60Wで100W相当の明るさというものである。
 さらに波長の短い光(より白かったり青っぽいやつ)とすることで光に鋭さを与えている。
 私もこれらを愛用しているが、オートバイ用のは高いので車用のを流用している。
 特に問題はなかったので、最近安売りで買ったオートバイ用のバルブの配光がちょっと気に入らなかったのを理由に、写真のバルブを買ってみた。


左がパッケージ、右が中身

 ダイワ販売株式会社から出ている REMIC SPARK BEAM TWIN'S というものである。
 60/55Wが130/110W相当になるというもの。
 ロービームは「ホワイト光を放ち」という説明の表現を越えてやや青っぽく、ハイビームははっきりと青い。
 ハイビームが黄色っぽいタイプもある。
 このやや青っぽい光は、思ったほど明るい感じがしない。
 なんか、光が出ているという感じが少ないのである。
 一方、ハイビームは光の当たった物体が青くなるので光が届いているという感じはする。
 端子も金メッキ(だと思う)で、接触抵抗を減らしているようにも思える。

 しかし、何が不満かというと、その寿命である。
 毎日30分程度+週末数時間の点灯で、10日ほどで切れてしまった。
 一つだけならたまたまということもあるが、二つとも10日ほどで切れてしまったのである。
 スタンレー電気の高効率バルブのパッケージには「効率をあげるために寿命を多少短く設定してあります」というようなことが書いてあるが、このバルブにはそのようなことは書いていない。
 まぁ、「競技用」と書いてあるので一般公道での使用には多少問題はあると思うが、この問題点は普通は明るさが法律上の制限を越えるという意味のはずである。
 寿命が短いとしても、普通のバルブは2年3年と持つのだから、多少短くても1年くらいは持ってくれないと困る。
 競技用であろうとなかろうと、こんなに寿命が短いのは致命的だろう。
 はっきり言って、ディスカウントショップで買えるような商品としては欠陥品と思える。

 あえて書こう、このメーカーのこのシリーズは、絶対に買ってはいけない

ベンチバイス

 要は作業台のことである。
 いろいろと工作をする際に、手頃な台が欲しかったので探していたところ、ホームセンターで税抜きで2,000円を切る値段で売られていた。
 折りたたみ式で、使わないときにはたたんでおける。
 が、それほどコンパクトにはならないのが悲しいところ。
 実際に使ってみたところ、多少華奢ではあるが、そこそこいい感じである。

 この作業台の特徴としては、ハンドルを回すことで天板が移動し、万力のように物を挟むことができるのである。
 さらに、天板の穴にプラスチックの押さえを差し込むことにより、ハンドルで天板を移動させて間に物を挟んで固定できるため、鋸引きなどの作業もしやすくなる。
 このように万力の機能付きとなれば買わない手はない。

 さて、買ってきたらまず組み立ててである。
 足についている黒い板、これが左右の足の幅および強度を決めているものなのだが、こいつが薄い鉄板で、なんだか情けない。
 それどころか、薄いので手を切りそうである。
 で、この板を固定するためにネジを締めこんでいったら、足自体もネジの締め込みでへこんできたのはお笑いである。

 天板は合板なので、木ネジを締めこんでいってもかっちりと止まらない。
 締め過ぎるとネジがばかになりそうである。
 それでもなんとか組み立てて、しばらくはただの作業台として便利に使っていた。

 先日、とうとうこの作業台の万力機能を使う機会が訪れた。
 2mm厚のアルミの板を挟みこみ、ハンドルを回してしっかり固定。
 アルミ板を曲げようとして力を加えたところ、ベキッと音がした。
 天板を取り付けている板金が変形し、木ネジが一本抜けかかった。
 さすがは2,000円程度のしろもの、全く強度がない。
 この程度で万力様と張り合おうなんて、ちゃんちゃらおかしかったのである。
 それ以後、天板を閉じると写真のように山形になってしまった。
 普通の加工でもなんか天板がぐらぐらしてやりにくい。
 値段が安いので文句を言える筋あいのものではないのだが、もうちょっとしっかりとした作りであれば、かなりいい道具だったと思えるだけに残念である。

ウインターグローブ

 RSタイチという、オートバイ関係では有名なブランドから出ているオートバイ用のウインターグローブ。
 ここの製品は割と評判がいい。
 造りも悪くないし、機能も悪くない。
 しかし、このグローブはちょっといただけない。

 ウインターグローブは、防寒性と操作性という相反する条件をそこそこのレベルで満たさないといけない。
 暖かくするにはモコモコにすればいいのだが、そうすると操作性が悪くなる。
 どうでもいいと思っている人にはどうでもいいことなのだが、ちゃんと操縦をしようと考えいる人にとって、オートバイのブレーキやクラッチはかなりデリケートな操作を要求されるものなのである。

 ウインターグローブを選ぶ時に私が注目する点は、手首をちゃんとカバーしてくれるかどうかである。
 手首の部分が長く、かつ、裾の部分を絞って風の侵入を防げるかどうか。
 手首が冷えると、そこを通っている血管が冷やされ、手が冷えるのである。
 また、ゴアテックスを採用していために蒸れにくくなっている。
 水分があると保温性が落ちるのである。
 そういう意味ではこのグローブは合格である。


 さて、この手袋の構造はどうなっているのか。
 左から順にアウター、ゴアテックスシート、フリースのインナーとなっていて、防寒の基本であるレイヤード(重ね着)という観点から見ても全く問題が無い。
 事実、意外に暖かいのである。
 おかげで多少ごわついて操作性が落ちるが、しかたがないところだろう。

 ではなぜ使えないとするのか。
 それは、着脱が非常に面倒なのである。
 三層構造のそれぞれのパーツを止めているのは手首にあるベルクロテープのみ。
 グローブから手を抜こうとすると、フリースのインナーが一緒に抜けそうになるのである。

 いくらゴアテックスで水分を外に逃がすとはいえ、ハンドルを握っている手のひら側には何の意味もなさない。
 特に、暖房の効いたところから出てくると、保温性の良さがあだとなっていっそう手は汗をかく。
 いくら汗を吸ってもさらさらのフリースとはいえ、水分を含めばそれなりに摩擦は増えるし、ましてや手とフリースの摩擦とゴアテックスシートとフリースの摩擦では、手のほうが摩擦が大きい。

 そんなわけで、このグローブを脱ぐときにはていねいに各指を少しずつ少しずつ抜かないといけないのである。
 そこで一歩間違うと、中でフリースがひっくり返り、指は二度と本来の場所に入らなくなる。
 ひっくり返して脱いだ長袖のセーターを、ひっくり返ったのをなおさずに暗いところでちゃんと着ることができるのかを考えればその難易度の高さはよくわかるだろう。
 そうなると、中を全部出して順番に入れなおさないといけない。
 ていねいに指を抜いても普通のグローブのようにスポッとは入らない。
 中のフリースをほぐしつつ指の入口を探さないといけないのである。
 ある雑誌では「慣れればそれほど問題ではない」と書かれていたが、慣れが必要なこと自体問題である。

 寒い冬にこんなことで時間をかけるのは本末転倒である。
 気軽に着脱できないグローブというのは非常にもどかしい。
 毎回グローブを着脱するたびに「今度こそ買い替えよう」と思うのである。
 この着脱性さえよければお気に入りの一品なのだが。
 いっそのこと、指先部分を接着剤で止めようかとさえ思うのだが、インナーだけ出して洗えるというメリットも捨てがたいのである。
 これができないと、このグローブを買った意味が無いともいう。

 ちなみに、かんじんのゴアテックスのラミネートだが、親指と人指し指の間の部分がやぶれてしまった。
 そんなわけで、ゴアテックスの部分だけをはずしてフリースのインナーだけを入れて使ってみたところ、上記の問題はそれほど気にならない。
 操作性も悪くない。
 ただし、防寒性能はかなり落ちるので、春秋用となってしまう。
 まぁ、夏用グローブじゃ寒いけど、冬用を使うのもなんだなぁ、という中途半端な季節には重宝しそうである。

 このグローブ、現在は販売されていないはずだが、似たような造りのものは時々出てくる。
 (と思ったら、RSタイチから似たような造りのものがちゃんと売られていた@2,002年11月)
 購入の際にはこのようなことを考えて検討してほしい。

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